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百年企業・保科製作所のものづくり

1950年代、X線防護衣の草分けとなる『JIS前掛』を開発。
専門メーカーとしての道を歩みはじめました。

レントゲン技術の夜明けの時代、全国の医療現場にいち早くX線防護衣を供給。
以来、保科製作所は、新しい技術にも果敢に挑みながら、
X線防護衣の機能性や快適性の向上に励んできました。
また、近年は、X線防護にまつわる総合的なソリューションをお届けする企業として、
放射線を扱う空間づくりのサポートなどにも幅広く取り組んでいます。
そして、2013年、保科製作所は創業100年を迎えました。
『百年企業』としての誇りを胸に、積み重ねてきた経験を力に、
これからも最先端のものづくりを続けていきます。

原点に、職人の業

1913年、『往診用カバン』の工房として創業。

1913年(大正2年)、保科製作所は現在と同じ東京都文京区本郷二丁目で、個人商店として開業しました。
皮革の縫製技術に習熟していた創業者が手がけたのが、町の医師らが使う往診用カバンの製作です。分厚い革を縫製して作るこのカバンは、頑丈で、大きく開く口の内側にはケースが付属、聴診器などの道具や消毒用品が機能的に収納できるようになっていました。通称『保科型』という特許も取得、創業期から昭和30年代までの長きにわたり、全国の医師たちのもとで愛用されました。

『保科型』の往診用バッグ。当時は『ホシナベスト印』というブランド名を使用していた。 往診用カバンのカタログ。

時代に先行して、X線防護衣の開発に着手。

鉛入りのゴム素材をエプロン型に型抜きし、縫製して作られた『JIS前掛』。旧JIS規格の厳しい条件を満たしており、製品には信頼の証であるJISマークが刻印されていた。 その後、保科製作所が取り組んだのがX線防護用品の製造です。主要製品は『防護板』といい、レントゲン装置の管球を覆い、放射線の散乱を防ぐ役割を果たしていました。
そして、1954年(昭和29年)、『第五福竜丸事件』が起こります。マグロ漁船 第五福竜丸がアメリカ軍の水爆実験による死の灰を多量に浴び、乗組員全員が放射能に被ばくしたというものですが、ある意味、この出来事が保科製作所の行く道を決定づけました。
なぜなら、1950年代といえば、国内でレントゲン技術が普及しはじめた時期。事件を通じ、放射能の恐ろしさをだれもが痛感する一方で、人々の暮らしと放射線が今後ますます関わりを深めていくであろうことも予測されていました。
そんな状況を受け、保科製作所がみずからの使命として課したのが「より優れたX線防護用品を世の中に届けること」だったのです。
なかでも往診用カバンづくりで培った職人技が生かせるものとして精力的に取り組んだのがX線防護衣の開発でした。そして、完成したのが、日本におけるX線防護衣の草分けとなった『JIS前掛』です。
レントゲンの普及ともあいまって、『JIS前掛』には発売当初より全国から続々と引き合いがありました。その後も改良を重ねながら機能性や信頼性をアップ。バングラディシュ、サウジアラビアなど海外の国々にも数多く輸出されました。

チャンジ精神で明日をひらく。

新しい技術への挑戦がX線防護衣の進化を支えてきた。

積層方法 X線防護衣でもっとも重要なのは放射線の遮へい性能ですが、もう一つ大事なのが、「軽い」、「やわらかい」、「汗をかきにくい」という3つのキーワードに表される快適性です。
前述の『JIS前掛』は、厚さ2mmほどの鉛入りのゴム素材で、1着の重量は今とは比べものにならないほどでした。しかも、きわめて硬い素材であったために、着用時にはまるでヨロイのように感じられたといいます。
その後、ゴムよりも軽くて柔軟性のある塩ビ素材が登場、加工における自由度も上がり、袖付きの製品などユニークなデザインのX線防護衣も生まれました。また、“積層方法”という製法を開発して、よりしなやかで動きやすい製品も実現。これは、遮へい材を2枚の表面材で挟み込むというもので、現在、この製法は国内のX線防護衣の主流となっています。
さらに、「軽さ」という課題をより飛躍的に向上させたのが、“無鉛”の放射線遮へい材です。NASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙開発技術から生まれた新素材で、鉛入りの遮へい材より30%も軽いというメリットがありました。1995年、保科製作所はこの遮へい材をいち早く導入、X線防護衣の大幅な軽量化を実現しました。現在は広く知られる“無鉛”という言葉を最初に使ったのも、じつはわたしたち保科製作所でした。

保科製作所の挑戦の歴史

1950年代 X線防護衣『JIS前掛』を開発(国内初)
1980年代 積層方法を開発
1995年  無鉛の遮へい材を導入(国内初)
2008年  空調システム付きX線防護衣『ウィンド・ピア』を開発
2010年  バックフレーム入りX線防護衣『フレームライト』を開発

医療現場のみなさまに、少しでも優れた製品をお届けするために。

空調システムが作る“風の道”。長年の課題であった涼しい防護衣を実現した。 残る課題は「汗をかかない」。これについては、インナーメッシュ素材で通気性を高めた製品などを開発してきましたが、さらに根本的な解決策となったのが、2008年に発売した空調システム付きX線防護衣『ウィンド・ピア』シリーズです。
これは気化熱を利用したもので、付属のファンが汗をスピーディに乾かすことによって涼感をもたらすシステム。「着用するとすぐに汗が引く」と現場でも高い評価を得ています。
X線検査が幅広く普及し、また、画像診断を用いた手術(IVR)が日常的に行われる昨今は、医療現場のみなさまが防護衣を着用して過ごす時間が格段に長くなっています。
医療という繊細な行為を支えるために、X線防護衣はこれからもいっそう進化させていかなくてはなりません。保科製作所ではこれからも進取の精神をもち、どんなに難問と思われる課題にも懸命に取り組んでいきます。

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